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高齢者の薬物動態と薬物反応性

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なぜ高齢者の薬物療法に注意が必要なのか

高齢者は一般的に薬物の反応が強く現れると言われています。そのために副作用のリスクも高くなります。その原因としては組織感受性の変化や薬物動態の変化が考えられます。

消化管吸収

加齢に伴って消化管活動が低下し、胃内容排出が遅れ、薬の消化管吸収は遅延します。

高齢者は無酸症が多いと報告されている(Biol Pharm Bull. 2001 Mar;24(3):313-5)ので、ベンゾジアゼピン系など酸に不安定な薬の胃内分解が減少し、吸収量が増加すると言われています。

体内分布

加齢に伴って血漿アルブミンが減少するので、蛋白結合の高い薬の血漿中遊離形が増加し、組織への薬の分泌が増加すると言われています。

尿中排泄

年齢とともに腎血流量が次第に減少する。その減少率は毎年1~2%で、65歳では腎血流量は45~50%も減少する。腎血流量の減少に伴い糸球体血流量が減少するので、主として糸球体濾過によりアミノグリコシド類やジゴキシンなどの半減期は高齢者では延長します。これらの半減期の延長はクレアチニンクリアランスの減少と一致する結果を示します。

代謝

一般的に年齢とともに代謝は遅くなる傾向になります。シトクロムP450などの活性の低下することに加え、肝血流量の減少が起因すると考えられています。肝血流量の影響を受けやすい薬剤の肝クリアランスは低下します。高齢者では代謝酵素の誘導も起きにくいと言われていて、例えばプロプラノロールのように肝臓における初回通過効果を受けやすい薬は経口投与後の血漿中濃度の動態が若年者と高齢者では大きく異なります。

上記から薬物療法の際に確認と提案する事項

高齢者と一括りで考えるのではなく、個々の状況によって対応を考える必要性があると思われます。

ここで調剤報酬点数表からできることを考える

服用薬剤調整支援料

不要な薬剤などの減薬、減量、あるいは増量を提案することで、医師に対しての注意喚起を行う

体重減少による単位体重当たりの投薬量の増加

体水分量の減少による水溶性薬剤の血中濃度上昇と分布容積の減少

体脂肪増加による脂溶性薬剤の血中濃度低下と分布容積の増加

服薬情報等提供料

医師との情報共有が安全な薬物療法の基盤となりうる

期待するべき時間に効果が現れているかチェックする

副作用などが強く現れていないかチェックする

まとめ

慢性疾患の多重構造になっている高齢者では多剤服用に陥りがちなので、様々な点からチェックを行う必要性が出ます。こういった方こそ医師との連携が出る可能性が高いので、調剤報酬の観点も兼ねながら介入することが重要です。

薬剤の事故が起きないということだけでなく、患者にとってよい薬物療法が提供できるように処方提案を行いましょう。