Amazonが参入してくるというニュースを受けて小規模面調剤の経営者としてどのような方向性でプランを立てているのかを記事にしました。
黒船Amazonに対して不平等条約を締結するのか、はたまた敬遠して鎖国を続けるのか。どのように立ち振る舞うのか様々な企業が考えているようです。たくさんYouTubeも更新されていて全部見てみました。
私の場合は小規模面調剤はAmazon参入で潰れてしまうのか、どう立ち振る舞えばよいのかについて考えてみましたのでお付き合いください。
※2022年9月現在のAmazonが中小企業に対してオンライン服薬指導のプラットフォームを仲介するという情報を元に記事にしています。
本題に移る前に…
皆さんは「はじめてのおつかい」という番組を知っていますか?日本テレビの長寿番組です。内容としては、3~5歳くらいの子どもたちがおつかいに出かけるというものです。子どもたちが一人で頑張りますが、時には近所の方、時には商店街のお店の方に助けてもらいながら『おつかい』を成功させます。
子どもが商店街の方に助けてもらいながら成長(成功)していく過程を見ていると、「こういう関係性のあるお店いいな」と思います。この魅力こそが個店が持つ強みだと思います。私はこの街と人の関わりを「コミュニティ機能」として考えています。そして、これこそが小規模面調剤の生き残る道だと感じています。
逆に言えば、個店で持つべきコミュニティ機能を捨ててしまっている薬局はAmazonなどの大手資本が「便利さ」で参入することに対して、勝ち目がないと考えてしまうことが多いのではないかと感じます。
2分割される人間のニーズ
「便利」と「不便」の2択を考えたときに、多くの方が「便利」の方が良いと感じるのではないでしょうか。私も便利な世の中に賛成です。昨今の携帯電話の発展の恩恵も受けていますし、サブスクリプションサービスにも登録しています。私自身が森の中での自給自足が素晴らしいという考えではないことをご理解ください。
そこで話を少し戻します。
それでは「チェーンの居酒屋」と「行きつけの居酒屋(バー)」ではどうでしょうか?同じビールが「チェーン」では500円、「行きつけ」では800円です。もちろん選択肢は分かれると思います。私は「行きつけの居酒屋(バー)」を選択していました。なぜ、不便・高い店をわざわざ選択しているのでしょうか。
私は昔からこの選択する理由付けこそ「コミュニティ機能」だと思っています。私は、人は居場所を求める存在・1人ではないと思える環境が必要だと思っています。誰しもなんとなく居心地が良いという環境を探しているような気がします。
「はじめてのおつかい」「行きつけの居酒屋」の2つだけの例になっていますが、私の言いたいことは少し理解いただけたのではないかと思います。
コミュニティ機能なんて求めているの?
いやいやいやいや、それってあなたの感想ですよね?
そんなことを思うかもしれませんが、これは私の意見ではないのです(そもそも私はゼロから考える脳がないのです)。興味があったらこちらの資料(内閣府:特集 若者にとっての人とのつながり)を読んでみてください。
この資料から抜粋しながら少し論理展開を行いたいと思います。
まずこの資料の対象が「おじいちゃん・おばあちゃん」ではなく、「若い世代(全国の15歳から29歳までの男女6000名を対象)」だということです。つまり、インターネットなどのツールに恵まれている世代が対象になっているのです。
人は居場所を求めている
ここからは抜粋です。勝手に資料をコピーして問題があれば削除するので許してください。
上記の図表2から、若者のアンケート調査では、自分の居場所と感じる場所は「自分の部屋」が多くなっています。今回比較するべき「地域」と「インターネット空間」は6割程度という近い割合で居場所と回答しています。むしろインターネットの方が多いようです。それくらい若い方はインターネットに抵抗なく使いこなしています。
若者世代でも普段のやりとりが多い間柄を抽出すると「地域」は少しインターネット上よりも少し関りという面で優位性を示せる調査結果になっています。インターネット上を居場所と感じていても、本当の繋がりはリアルの方が安心できるということでしょうか。
薬局は処方が約30日となり1ヵ月に1回の面会があり、普段のやり取りが多い間柄になると思います。疾患や薬剤情報というナイーブな情報を扱うことに対して、相談先としては地域の人の方が望まれている意見が見受けられます。
これが若い世代での意見です。もう少し上の世代ではどのような結果になるのか、想像することができるのではないでしょうか。
人との繋がりは少しずつ少なくなる
年齢と直結させるとデータからの飛躍が見られてしまいますが、一般論として理解してもらえればと思います。
面調剤の最大のターゲットは生活習慣病患者です。つまり壮年期~老年期(特に老年期)がメインとなります。社会的なキャリアも終えて、退職を迎える方などがターゲットになりますが、年を取れば取るほど人との繋がりは消えていきます。上記の図表からも未就業者は居場所が少なくなっています。老年期の方でも上記の図表と同じような結果になるでしょう。
私はその受け皿として地域コミュニティ機能を薬局が生かすべきだろうと感じています。
居場所の数を増やしてあげることがメリットとなりうる
患者が薬局を選択するかは自由なので押し付けることはできません。しかし、薬局は受け皿となれることをアピールするべきだと私は思います。
このデータから居場所の数が多いほど暮らし向き(生活の質)は向上するとされています。若い世代の調査結果ですが、私の実感としては高齢者の方がよりこの傾向は強いのではないかと感じています。
薬局が居場所としての選択肢となることで、患者の生活の質を上げられると思っています。
それでは何をしたら良いのか?
薬局が地域コミュニティ機能を発揮するためにに最初に取り掛かるのは「地域包括支援センター」との連携だと私は思います。そのための地域ケア会議なのです。まずは地域ケア会議に積極的に参加してください。これがきっかけとなり地域住民との意見交換ができるようになります。
私が地域へ向けて行っていた活動は「お薬相談会」「薬局体験会」「福祉施設の子ども食堂への参画」「周辺のゴミ拾い」「認知症カフェでの講演」「町内会長との面談」「地域の祭の手伝い」のようになっています。
いろいろなところに顔を出すようにしていました。
活動が地味ですね。すみません。しかも、すぐにお金にならないのです(笑)
まとめ
面調剤は「不便」です。だからこそ会話が必要になり、人との繋がりがあります。不便でも選択されるということが面調剤の最大の強みであり狙いです。
仮に便利さだけを求める患者がいたとして、その方はAmazonに移行します。この患者を引き留めるために便利を追い求めても、便利さでAmazonに勝つなど不可能です。Amazon参入の危機感から便利さだけの方のニーズに目を暗まして、正しい選択を見誤ることだけは避けなければなりません。
実は最後に1個だけ懸念があります。それはインターネット上でのコミュニティ機能の充実です。2022年現在では地域のコミュニティ機能は基本的に対面の方が有効でしたが、インターネット上でコミュニティ機能が充実することがあれば、地域薬局は1つ役割を終えるところになるのかもしれません。
逆言えば、Amazonを利用しようと、処方箋を応需して薬を出すだけなら大きく患者層は変化が出ないと思います。
そこで、これからの薬剤師は、Amazonのプラットフォームも利用しつつ、自身の強みを生かしたコミュニティを拡げるように活動していくのが重要だと感じています。選ばれる薬局から選ばれる薬剤師に変化することは今後の流れだと思います。
こんな考えでは私の薬局は消えてしまいますかね?私は20年後も同じことを言っていると思います。
私の結論としては
便利さだけをニーズにする患者に対してはAmazonプラットフォームを利用し、その活動に主軸を置かず、地域とのコミュニティ機能を充実させることに時間を割くべき