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ジギタリス製剤の特定薬剤管理指導加算

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特定薬剤管理指導加算のときに薬歴に何を書いてよいのかわかりません。

チャンピオン

薬歴に何を書いてよいのかではなく、何を指導すれば良いかわからないということだね。ジギタリス製剤は副作用の出やすい患者背景から分類を行って指導を行うようにするとわかりやすいよ。

実際に何を書けば良いのかを考える

薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)にはこう書いてあります。

  1. 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
  2. 服用患者のアドヒアランスの確認
  3. 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(特にジギタリス中毒症状(食欲不振、悪心・嘔吐、めまい、頭痛、不整脈)の発現の確認とその対策)
  4. 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
  5. 一般用医薬品やサプリメント等を含め、K排泄型利尿薬やCa含有製剤、β遮断薬等、併用薬及び食事との相互作用の確認

ハイリスク薬はその名の通りですが、致死性の副作用、過量投与での死亡など危険性のある薬剤に対応しています。まずはジギタリスの症例をいくつかチェックしてみて、対象患者を具体的にしておくことも重要です。

【症例1】70代女性、3年前からジゴキシン0.125mg/日服用(血清クレアチニン値=sCr 2.0)。受診は数ヶ月に1回程度にとどまり、血中濃度測定もできていなかった。めまいで受診(sCr 3.56)。食事もあまりとれていなかった。いったん帰宅。約30日後、めまい継続、食事もできておらず受診。脈拍63、sCr 4.95、本人が持参したことでジゴキシン服用中であると発覚、血中濃度2.73ng/ml。ジギタリス中毒の可能性があると判断し中止。中止3日後、脈拍68、sCr 4.38、血中濃度1.64ng/ml。中止5日後、食事もほぼ全量摂取、めまい、吐き気の症状もほぼ改善傾向、脈拍70-90台で推移。中止10日後、sCr 4.31、血中濃度0.72ng/ml

【症例2】80代女性。2年前より発作性上室性頻拍(脈拍113)で、ジゴキシン0.125mg/日開始。来院の1週間前から、ふらつき、息切れ、疲労感あり、食欲はあった。このときの脈拍56、sCr 0.89。約1ヶ月後の受診で、倦怠感、食欲低下を訴えジゴキシン中止、sCr 0.8、血中濃度2.29ng/ml。中止約30日後、脈拍85前後、倦怠感、ふらつき、下肢浮腫は続いていたが、食欲は出てきており、息苦しさもなく経過。

【症例3】90代女性。内服開始時期不明だが、ジゴキシン0.125mg/日服用継続。食事摂取は不良、来院前から下痢があった。嘔吐し、血圧測定できなかったため救急来院、BP70/40、脈拍42、脱水、腎障害もあり、sCr 2.07、ジギタリス中毒と推測し中止。血中濃度5.14ng/ml。中止4日後、脈拍60台、sCr 1.0。中止約14日後、sCr 0.74、血中濃度0.3ng/ml以下。

(引用:民医連新聞 第1594号 2015年4月20日)

有効治療濃度域は0.8~2.0ng/mlとされています。一般的に治療域は高く設定されており、心不全治療時では、0.5~0.8ng/ml、心房細動治療時では、1.2ng/ml未満が推奨されています。血中濃度は死亡リスクに相関し、0.9ng/mlを超えると死亡率も増えるとの報告もあります。ジゴキシンは腎排泄型で半減期が36~48時間と長いため、特に高齢者への投与には注意が必要です。食事量や水分摂取の低下などによる脱水状態に注意を払うとともに、腎機能を低下させる薬剤との併用の有無も確認しましょう。

ジギタリス製剤の背景別の指導のポイント

全背景ともに共通のチェック事項

副作用と確認事項

ジギタリス中毒

確認事項:食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、光がないのにちらちら見える、複視、めまい、頭痛、錯乱、徐脈、不整脈

指導事項:水分補給が不足している、熱発などが起きていると脱水から血液の濃縮が起き、ジギタリス中毒になる可能性があるので注意してください。初期症状を感じる場合には早急に医師の診察を受けるようにしてください。

高齢者

副作用と確認事項

腎機能、体液量の減少に注意

確認事項:腎機能が保てているかの確認、食事や水分摂取などが問題なく行えているかチェック

指導事項:食事や水分補給などが減少している場合には服用が起きやすくなるので注意が必要です。また、定期的に腎機能を確認して、正常な腎機能が保てているかチェックしましょう。

利尿薬服用患者

副作用と確認事項

K排泄型の利尿薬

確認事項:低カリウム血症になるとジギタリス中毒になりやすいので注意が必要。また体液量が低下にも注意が必要になる。

指導事項:定期的な血中カリウムのチェックを行ってください。

K保持性利尿薬

確認事項:本剤の腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇するとの報告がある。

指導事項:ジギタリス中毒の初期症状が現れたときには血中濃度の測定などを行う必要があるので受診を行うようにしてください。

骨粗鬆症薬服用患者

副作用と確認事項

カルシウム経口剤

確認事項:血中カルシウム値が上昇していないか確認。高カルシウム血症ではジギタリス中毒になりやすいので注意が必要。

指導事項:定期的な血液検査を行って異常がないかチェックしてください。

ビタミンD製剤

確認事項:血中カルシウム値が上昇していないか確認。高カルシウム血症ではジギタリス中毒になりやすいので注意が必要。

指導事項:定期的な血液検査を行って異常がないかチェックしてください。

心筋細胞内Na+はMg2+の存在下に作動するNa+-K+ ATPaseによって細胞外K+と交換され細胞外へ排出される。ジギタリスはこのNa+-K+交換系を阻害することで強心作用を発揮する。すなわち,上昇した細胞内Na+はK+の代わりにCa2+と交換されることで細胞外に排出され,代わりにCa2+が細胞内に流入することによって心収縮力が増大する。したがって,低K血症や高Ca血症,また低Mg血症においてはジギタリスの作用であるNa+-K+交換系の抑制,Na+-Ca2+交換系の亢進が増強し,中毒の危険性が増大することになる。

解熱消炎鎮痛剤服用患者

副作用と確認事項

インドメタシン、ジクロフェナク

確認事項:腎排泄を抑制するために血中濃度が増加する可能性がある。

指導事項:他の消炎鎮痛剤を検討できないか確認を行う。

健康食品等の摂取がある患者

副作用と確認事項

セント・ジョーンズ・ワート

確認事項:薬の作用を弱めるおそれがある。

指導事項:摂取を止めてもらうとともに血中濃度の測定を提案。

まとめ

ジギタリス製剤の特定薬剤管理指導加算を算定する際にはジギタリス中毒を中心に、その患者背景からの服薬指導が効果的と思われます。特に心不全の治療では利尿薬との併用が多くなるので、脱水やKの値などの定期的なチェックを行ってもらうと患者さんにもメリットのある服薬指導になるのではないかと思われます。初期症状もチェックして継続した管理を実施してください。