くすりの勉強

ARB

チャンピオン

まずはARBとACE阻害薬を見ていこう。どちらもアンジオテンシンが関与している高血圧の治療薬だね。

薬学部の時はアンギオテンシンだったのに、添付文書はアンジオテンシンってなんか変だよね・・・

高血圧とアンジオテンシン

アンジオテンシノーゲン→(レニン)→アンジオテンシンⅠ→(ACE)→アンジオテンシンⅡとなり、アンジオテンシンⅡがAT₁受容体に結合すると高血圧に関与する様々な作用が起きる。

アンジオテンシンⅡの作用:血圧
  1. 細動脈への直接作用による血管収縮
  2. 交感神経刺激伝達の増強による血管収縮
  3. アルドステロン分泌促進を介するNa⁺・水再吸収の増加と体液量の増加

アンジオテンシンⅡの作用:組織
  1. 細胞の遊走・増殖→血管壁の肥厚
  2. 心筋細胞の肥大→心肥大
  3. 線維芽細胞による細胞外マトリックス産生

→結果:血管壁の肥厚・線維化、心肥大・線維化の原因

つまりARBはアンジオテンシンⅡを受容体に付かなくする、ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡの産生を抑える薬剤なので、この作用の逆を考えれば良いだけ。ここだけ抑えてあとは肉付けをしながら勉強を行っていこう。

ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)

ARBの作用機序

アンジオテンシンⅡAT₁受容体に拮抗することで、アンジオテンシンⅡの受容体への結合を阻害して降圧作用を発揮。血管拡張、交感神経亢進を抑制などによる作用を示す。ARBはキマーゼ由来のアンジオテンシンⅡの作用も抑えることができることがACE阻害薬にはない特徴となる。

ARBの副作用と注意事項

ARBは比較的安全な薬剤と言われているが、特徴的な注意点は3つくらい挙げられる。

  • Kの上昇
  • 妊婦に禁忌
  • まれではあるが注意するべき副作用に血管浮腫

ARBの種類と特徴

ニューロタン

  •  一般名:ロサルタン
  •  糖尿病性腎症などへ使用する場合もある
  •  本剤の成分(ロサルタンカリウム)と他の薬剤との配合剤
  • サイアザイド系利尿薬との配合剤(プレミネント配合錠 など)がある

ブロプレス

  • 一般名:カンデサルタン
  • 慢性心不全などへ使用する場合もある
  • 本剤の成分(カンデサルタンシレキセチル)と他の薬剤との配合剤
  • サイアザイド系利尿薬との配合剤(エカード配合錠 など)がある
  • Ca拮抗薬との配合剤(ユニシア配合錠 など)がある

ディオバン

  •  一般名:バルサルタン
  •  OD錠があり、嚥下能力が低下した患者などへのメリットが考えられる
  •  本剤の成分(バルサルタン)と他の薬剤との配合剤
  • サイアザイド系利尿薬との配合剤(コディオ配合錠 など)がある
  • Ca拮抗薬との配合剤(エックスフォージ配合錠、アテディオ配合錠 など)がある

オルメテック

  •  一般名:オルメサルタン
  •  OD錠があり、嚥下能力が低下した患者などへのメリットが考えられる
  •  本剤の成分(オルメサルタンメドキソミル)と他の薬剤との配合剤
  • Ca拮抗薬との配合剤(レザルタス配合錠)がある

ミカルディス

  • 一般名:テルミサルタン
  • 本剤の成分(テルミサルタン)と他の薬剤との配合剤
  • サイアザイド系利尿薬との配合剤(ミコンビ配合錠 など)がある
  • Ca拮抗薬との配合剤(ミカムロ配合錠 など)がある
  • Ca拮抗薬及びサイアザイド系利尿薬との配合剤(ミカトリオ配合錠)がある

アバプロ、イルベタン

  • 一般名:イルベサルタン
  • 本剤の成分(イルベサルタン)と他の薬剤との配合剤
  • サイアザイド系利尿薬との配合剤(イルトラ配合錠)がある
  • Ca拮抗薬との配合剤(アイミクス配合錠)がある

アジルバ

  • 一般名:アジルサルタン
  • 本剤の成分(アジルサルタン)と他の薬剤との配合剤
  • Ca拮抗薬との配合剤(ザクラス配合錠)がある

ARBの特徴は基本的にはクラスエフェクト(ARBであればどれも同じ効果と副次的な効果が期待できる)と言われることが多くなりました。この分野の差別化商戦が過激化してしまったことによってJikei-Heart問題やCase-J問題を生んでしまったのですね。

臓器保護作用

腎保護作用
  1. アンジオテンシンⅡは腎臓の糸球体の出口の血管(輸出細動脈)を狭くして、糸球体内圧を上昇させる
  2. これが蛋白尿を増加させ、糸球体過剰濾過を助長
  3. ARBは、その作用に抑制的に働くので輸出細動脈を拡げて糸球体内圧低下
  4. 糸球体濾過量自体が減るので、見かけ上では、血清クレアチニンが上昇することがある
  5. 30%以上の上昇は、両側の腎動脈狭窄の可能性があり、減量又は中止で対応(専門医へ)

※CKDガイドラインではRA系投与時のクレアチニン上昇の原因として① 腎動脈狭窄(特に両側性)② 非ステロイド性抗炎症薬やシクロスポリン投与③ 心不全④ 脱水(特に高齢者では夏場や下痢,食思不振時)⑤ 尿路異常(特に水腎症)などが挙げられている

※CKDガイドラインでは血清Kが5.5 mEq/L以上になる場合にも専門医への紹介の記載あり