くすりの勉強 PR

服薬指導前にB型肝炎について知っておく

記事内に商品プロモーションを含む場合があります
この記事の背景

B型肝炎に関しては薬物治療が長期にわたる可能性があり、さらに自己中止させないように買服薬指導を行う必要があります。

B型肝炎の背景を知り、服薬指導に役立てましょう。

B型慢性肝炎

特徴

B型肝炎ウイルスの感染経路には「垂直感染(母子感染)」と「水平感染」があります。

感染経路の1つのB型肝炎ウイルスに感染している母親からの出生時の感染ですが、現在では母子感染の予防対策がとられているため、出産時に母親から感染することは、ほとんどなくなりました。
一方、幼児期にB型肝炎ウイルスに感染した場合も感染者(キャリア)になることがあります。成人での感染はキャリアのパートナーとの性交渉、注射器の使い回しなどの血液や体液を介した場合が主です。

治療戦略

現時点でHBVを完全に排除できる治療法はありません。

HBV DNAはB型肝炎ウイルスの遺伝子で、体内のウイルス量を反映します。そのため治療効果の判定に用いられます。また、HBV DNA量が高いほど肝発がん率が高くなることがわかっているため、測定できないレベルまで下げることを目指します。また、ALT値が正常化することで肝炎の進展や発癌が抑制されます。

PEG-INF治療

インターフェロン製剤はウイルスに直接作用するとともに、身体にも働きかけてウイルスに対する「免疫」を高めることで、ウイルス量を減少させます。

ペグインターフェロン(PEG-IFN)は、インターフェロン(IFN)にペグ(PEG:ポリエチレングリコール)という物質を結合させ、注射後のIFNの吸収・分解を遅らせることで持続性を担保し、週1回の投与を可能にした製剤です。

IFN療法が奏効すればIFN投与を中止してからも、そのままHBVは増殖せず肝炎は鎮静化します。しかしIFNの効果が不十分でHBe抗原が陰性化しない症例、IFNを中止するとHBVが再度増えて肝炎が再燃する症例も多く、IFN療法の奏効率は30~40%と言われています。 

核酸アナログ製剤

核酸アナログ製剤はウイルスが肝臓の細胞の中で増えるのを抑える薬です。

耐性株出現の少ないエンテカビル(ETV)、テノホビルジソプロキシル(TDF)、テノホビルアラフェミド(TAF)が標準的な抗ウイルス薬になります。服薬によってウイルス量が測定感度以下になり、ALTが正常化することを目指します。しかし、薬を中止すると多くの症例で肝炎は再燃してしまいます。一旦内服を開始してから患者さん自身の判断で核酸アナログ製剤を自己中止すると、時に肝炎の急性増悪を起こし、 最悪の場合肝不全で死に至る場合があります。絶対に核酸アナログ製剤を自己中止しないように服薬指導が必要です。

薬理学的にはB型肝炎のウイルスのゲノムはDNAであり、ラミブジン・エンテカビルは三リン酸体、アデホビル・テノホビルは二リン酸体がDNAに取り込まれて、DNA鎖の伸長を阻害して効果を発揮します。

副作用のチェック

PEG-INF治療

38度を超える発熱・全身倦怠感・関節痛・筋肉痛が最もよく認められます。この副作用はIFNを継続して投与していくと徐々に落ち着き、数週後には多くの患者さんでは出現しなくなります。

IFN療法中にうつ病になる患者さんがいます。うつ病がひどくなると自殺する場合があります。うつ傾向が出てきたら、すぐにIFNを中止する必要があります。他の疾患で薬局を利用されている場合でも薬局が定期フォローに役立てる可能性があります。

電話でのフォローなどでうつ症状など確認できた際には情報提供書などでフィードバック

核酸アナログ製剤

比較的副作用は少ないと言われています。ただし長期の使用になるケースがあるので、自己判断で中止しないようにコンプライアンスのチェックが必要になります。

電話でのフォローなどで残薬などが確認できた内容は情報提供書などでフィードバック

B型・C型肝疾患に対する医療費助成制度について

助成対象医療

平成28年6月1日現在、B型・C型肝炎患者さんに対する医療費が助成される医療は以下のとおりです。

  • B型・C型肝炎:インターフェロン治療
  • C型肝炎:インターフェロンフリー治療
  • B型肝炎 :核酸アナログ製剤(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル、ベムリディ)

自己負担額について

区 分自己負担限度額(月額)
世帯の市町村民税(所得割)課税 年額が235,000円以上の場合20,000円
世帯の市町村民税(所得割)課税 年額が235,000円未満の場合10,000円

なお、世帯の課税年額の算定に当たっては、税法上・医療保険上の扶養関係にないと認められる者については、課税額合算対象から除外できます。

受給者及びその配偶者との間に、相互に地方税法上・医療保険上の扶養関係にないと認められる者については、合算対象から除外することが可能です。(ただし、受給者が各都道府県に対し、その旨の申請を行うことが必要です。)

まとめ

薬局での服薬指導は核酸アナログ製剤のみになるかもしれませんが、もしかすると併診していて注射による治療を行っている可能性があるので、注射薬も内服薬も副作用をチェックして医師との連携も図るのはいかがでしょうか。