薬局経営

ゼロから在宅に繋げる

この記事の背景

在宅の件数がゼロの薬局が最初に取り掛かることについて

今回の話は在宅の中でも介護保険を利用した居宅療養管理指導を算定するまでに押さえておきたい点について解説をしました。医療保険の流れと少しだけ異なるので注意してください。

※今回の記事は私の場合です。他の方法はたくさんあるので試してみてください。

在宅のスタートはどこなのかを知る

誰が介護保険の主軸なのか

介護保険での介入の場合にはケアマネさんが付いています。要介護の場合には「居宅介護支援事業所に所属しているケアマネさん」、要支援の場合には「地域包括支援センターのに所属しているケアマネさん」が担当してくれます。

「介護保険を利用する=ケアプランが必要になる」ということなので、介護保険を利用する場合にはケアマネさんとの連携が必須になると考えて間違いないと思います。

患者さんと薬局の間に立って薬剤に対する不満などが聴取できれば介入することが可能になります。

薬剤師の訪問は誰が決めているのか

これは医師が決めています。薬剤師の居宅療養管理指導には医師の指示が必要なためです。具体的に医師の指示についてですが、規定があります。

(問)薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導における医師・歯科医師からの指示は、医師・歯科医師による居宅療養管理指導の情報提供でもよいのか。

(答)医師・歯科医師による居宅療養管理指導の情報提供でも構わない。この場合の情報提供は、医師・歯科医師と薬局薬剤師がサービス担当者会議に参加し、医師・歯科医師から薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導の必要性を提案する方法や、サービス担当者会議に参加が困難な場合や開催されない場合には、文書(メールやFAXでも可)により薬局薬剤師に対して情報提供を行う方法が考えられる。

出典:厚生労働省「平成18年4月改定関係Q&A

このように文書にて指示をもらう、もしくはサービス担当者会議への出席時に指示をもらうことが必要になります。つまり、流れとしてはざっくりと下記のようになります。

介護保険の利用開始

⇒ケアマネの介入開始、ケアプラン作成

⇒通院困難のためにケアマネから医師に訪問を依頼

⇒医師は訪問して薬剤の管理の必要性を判断

⇒薬剤師に訪問指示

全く在宅をやっていない薬局が、上記の流れで患者の紹介を待ってしまうと在宅に辿り着かないかもしれません。それは医師からの指示を受動的に待ってしまっているためです。在宅をゼロから始めるには能動的に在宅患者を取っていかなければなりません。

在宅のスタート地点を押さえる

介護保険に繋げる

私の薬局経験上ですが、介護認定は全員が受けているわけではありません。介護保険の対象と思われる方も、まだ認定を受けていない可能性があります。通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)、福祉用具のレンタルなども必要とするような方に対して提案してみるとよいでしょう。

高齢患者が来局した際に介護認定を受けているか確認

認知機能の低下、歩行の悪化などがあればリハビリなどで改善できる可能性があります。基本的に介護保険を受けることで患者さんにデメリットはありません。情報を知らないような患者さんもいるので積極的に提案しても問題ありません

高齢者に提案だけで介護保険の申請などが進むのか、というと進まないと思います。介護認定までの一連の流れをつかむことが重要です。

介護認定が必要だと思われる患者さんに介護認定を勧める

⇒管轄の地域包括支援センターに相談を行う

ここまでで充分です。この先は地域包括支援センターにお任せしましょう。結果だけは必ず確認を行って担当のケアマネなどが決まっている場合も地域包括支援センターに確認すれば教えてくれることが多いと思います(地域によって異なる可能性があります)

薬剤師からスタートする

患者さんが介護認定が済んでいれば、ここから先の提案で問題ありません。薬剤師の在宅訪問は薬剤師からスタートする方法もあります。もちろん医師が訪問診療を行っていなくても指示があれば算定することは可能です。

薬剤師としての立場から「なぜ」訪問が必要なのか、提案を行いましょう

医師、ケアマネに薬剤師の介入が必要であることを伝えなくてはなりません。

※この点が抜けてしまうと「なんとなく」の在宅になってしまいます。なんとなくの在宅をしていると担当者会議などで温度差を感じることになります(具体的な介入プランが出てこないため)。

具体的な介入の必要性の例を挙げてみたいと思います。

自宅を訪問した際に残薬が多く、定期的なチェックが必要になる

服薬に関して危険な薬があるために、定期的なチェックが必要になる

足が悪く通院後に来局できない

褥瘡などの管理があり、薬剤の使用状況など自宅でチェックする必要がある

これら(だけではありません)の情報から、医師とケアマネに提案します。そして訪問の指示をもらうようにします。その後、契約して居宅療養管理指導を算定していきます。

どうやって情報を集めていくのか

上記のような情報があれば、医師やケアマネに提案を行うことができるというところまでご理解を頂けたのではないでしょうか。それではその情報はどうやって入手すればよいのでしょうか。それは患者本人です。私の場合の流れを下記で紹介します。

これは私と関わるのが初めての医師やケアマネに提案するときの方法です。つまり1例目の提案のときの方法になります。

自身の来局患者で薬の管理が怪しい人、認知症、褥瘡管理などの高齢者をピックアップします。いない場合には地域包括支援センターに連絡して、薬の管理で困っている方が地域にいないか確認します。

⇒居宅療養管理指導等は関係なく自宅の状況をチェックしに行きます(患者さんにはきちんと許可をもらってください)。これは在宅でのお薬相談などもイベントに取り入れることで、比較的警戒されることはなく自宅の状況を確認できます。

⇒薬の管理方法について提案します。私の場合だと無料貸し出しで配薬ボックスやお薬カレンダーを用意して配薬まで実施します。一包化の代わりに小型のジップロックなどで1日分を分けるなど、できる限りの薬の管理を行うようにしています。少し過剰な介入かも知れませんが、まずは改善していることが見えた方が次に繋げやすいこともあるので、できる限りのことを行います。

⇒約1週間後に薬の服薬状況をチェックしに再訪問します。

⇒どの程度改善できているのかを医師やケアマネに報告します。

⇒改善できていれば、医師から訪問指示をもらいます。同時にケアプランにも記載してもらいます。

このとき改善していない場合には居宅療養管理指導の提案ではなく、ヘルパーなどを入れることで服薬の補助や確認をしてもらうことはできないか、電話などを利用して服薬確認をしてもらえないか提案するように切り替えるのも1つだと思います。

もっと簡単に医師から指示もらえるよ?

そうかもしれません。私の場合は居宅療養管理指導も不必要な方にわざわざ算定することはしたくないので、確実に効果が上がる人をピックアップして1人目を受ける必要がありました。この1人目が個人的には非常に重要で1人目さえうまくできれいれば2人目、3人目などは医師やケアマネから相談されます。逆に1人目があまり効果的でないと思われた場合はあまり良い連携が取れず、次の紹介などに繋がってきていません。

そのために「なんとなく訪問開始」は避けた方が良いと思います。

効果を明確にして月に1回の介入なのか、2回なのか、それ以上が必要なのかプランをケアマネと相談していくことが重要だと思います。

関連施設との繋がりを強化する

医師、ケアマネ、地域包括支援センターと関係構築先が分かれているので少し迷うかもしれません。2人目の紹介に繋げるには、バランス良くこれら3つの施設と連携を強化して「もう一度お願いしたい薬局」になる必要性があります。

医師

医師との連携強化は報告書になります。服薬に関しての提案なども行うとともに、医師が確認してほしいところがないかを定期的にチェックするようにしましょう。

ケアマネ

基本的には介入時の様子などを報告するようにしますが、ケアマネにはその他の日常生活で気付いた点なども伝えると、他の介護サービスにも話が繋がることがあります。また、薬剤の変更点などに関しては、注意点などを伝えるようにしてケアマネが情報のまとめ役になれるように注意しています。

また担当者会議などは日程を教えてほしいということを早めに伝えるようにしてください。

地域包括支援センター

どこの管轄の地域包括支援センターもとても協力的で親切です。私の場合には定期的に電話などでコミュニケーションを取るようにしています。内容としては、上記にも示した通り、独居の人や薬管理で不安な人など聞いて回るようにしています。

最近では地域包括支援センターに「地域ケア会議」の日程など聞くようにすると比較的入りやすいかもしれません。

まとめ

1人目が非常に大切で、1人目の介入まではなかなか指示がもらえないのが現実です。そのために長期的に取り組んで、2人目につながる活動を行うようにするのが重要です。

訪問までの流れをつかんで、薬剤師が起点となることが、ゼロをイチに変える一歩になります。