保険の勉強

血液凝固阻止剤の特定薬剤管理指導加算

特定薬剤管理指導加算のときに薬歴に何を書いてよいのかわかりません。

チャンピオン

薬歴に何を書いてよいのかではなく、何を指導すれば良いかわからないということだね。血液凝固阻止剤の分類を行って、それに対する副作用の指導なども行うようにしましょう。個別指導の際の指摘事項も併せて確認をしていきましょう。

実際に何を書けば良いのかを考える

薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)にはこう書いてあります。

  1. 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
  2. 服用患者のアドヒアランスの確認、服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休止、検査・手術後・抜歯後の服薬再開の確認)
  3. 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(服用中は出血傾向となるので、過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策)
  4. 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
  5. 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事(納豆等)との相互作用の確認
  6. 日常生活(閉経前の女性に対する生理中の生活指導等)での注意点の指導

血液凝固阻止剤の場合には出血を中心とした副作用管理を意識して指導を行ってください。「効果は問題なし」や「出血なし」だけで特定薬剤管理指導加算を算定していると個別指導で痛い目を見るかもしれませんよ!

その前に、いつもとおりですが、薬効分類で算定していないかをチェックしましょう。

投与目的を理解しておくことが重要です。

特定薬剤管理指導加算1の対象となる「血液凝固阻止剤」には、血液凝固阻止目的で長期間服用するアスピリンは含まれるが、イコサペント酸エチル、塩酸サルポグレラート、ベラプロストナトリウム、リマプロストアルファデクス及び解熱・鎮痛を目的として投与されるアスピリンは含まれないと考えるように疑義解釈が出ているので注意しましょう

疑義解釈資料の送付について(その3)2010年(平成22年)4月30日 ┃ 厚生労働省保険局医療課

血液凝固阻止剤の各薬剤の指導のポイント

血液凝固阻止剤の全薬剤の共通項目

副作用と確認事項

出血

確認事項:脳出血等の頭蓋内出血、肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等

指導事項:高血圧患者には血圧の正常なコントロールを行わないと出血リスクが高くなることを説明。頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等の頭蓋内出血の初期症状に注意するように伝える。貧血などの症状が出ていないか確認を行ってもらう。

過量投与の兆候

確認事項:あざ、歯茎からの出血等の過量投与の兆候の確認

指導事項:上記の症状が見られた場合には医師に連絡を指示。外科的止血や新鮮凍結血漿輸液など適切な処置が必要になる場合もあることを伝える

日常生活のチェック

確認事項:女性の場合は生理などの確認、手術や抜歯などの予定がないか確認

指導事項:手術や抜歯などのある場合の注意喚起。実際の休薬期間は休薬中のリスクとの兼ね合いになるので主治医に相談して勝手に休薬しないように伝える

アスピリン

副作用と確認事項

副作用

確認事項:消化性潰瘍の既往がないか、下血等の症状がないか

指導事項:腸溶錠であるので、急性心筋梗塞ならびに脳梗塞急性期の初期治療に用いる場合以外は、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用させる。空腹時の服用を避けるように伝える

相互作用

確認事項:アルコールの常飲がないか確認

指導事項:アルコールの常飲があると消化管出血のリスクが高くなるので注意喚起

チクロピジン

副作用と確認事項

導入時のチェック

確認事項:血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用が主に投与開始後2ヵ月以内にあらわれることがある

指導事項:初期症状に注意。倦怠感、食欲不振、紫斑等の出血症状、意識障害等の精神・神経症状、発熱、咽頭痛などが現れた際にはすぐに受診を行うように指示

クロピドグレル

共通項目の指導

シロスタゾール

副作用と確認事項

導入時のチェック

確認事項:狭心症の発現に注意

指導事項:狭心症の症状(胸痛等)に対する問診を行い、脈拍の上昇が見られていないかチェック

ワルファリンカリウム

副作用と確認事項

出血

確認事項:出血のリスクが高くなるので定期的な受診ができているか確認。服薬を忘れたときの対応が理解できているかチェック

指導事項:定期的に診察を受け、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)を行ってもらう。薬を飲み忘れたときには、当日の服用予定時間の12時間以内なら服用が可能で、12時間を過ぎたら翌日のいつもの時間に服用すること、その際には前日の分を一緒に服用しないことを伝える

相互作用

確認事項:カペシタビンとの併用で出血の増悪

指導事項:ワルファリンカリウムの作用が増強し、出血が増悪する恐れがあるので、癌患者には注意を行う

相互作用

確認事項:ビタミンK製剤で効果が出なくなる

指導事項:止血目的以外の投与を行わない

相互作用

確認事項:納豆、クロレラ、青汁等のビタミンK含有食品の摂取

指導事項:食品に含まれるビタミンKが本剤のビタミンK依存性凝固因子生合成阻害作用と拮抗するので、摂取しないように注意喚起を行う

ダビガトランエテキシラート

副作用と確認事項

減量基準

確認事項:中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者

指導事項:中等度の腎機能低下がある場合には1回110mg1日2回投与の減量を考慮する必要があるので、定期的に腎機能などの確認を行ってもらう

リバーロキサバン

副作用と確認事項

出血

確認事項:服薬を忘れたときの対応が理解できているかチェック

指導事項:服用を忘れた場合は直ちに服用し、翌日から毎日1回の服用を行うよう指導。服用を忘れた場合でも、一度に2回分を服用せず、次の服用まで12時間以上空けるように指導

減量基準

確認事項:クレアチニンクリアランス30〜49mL/minの患者には、10mgを1日1回投与、クレアチニンクリアランス15〜29mL/minの患者には、本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は、10mgを1日1回投与

指導事項:中等度の腎機能低下がある場合には減量を考慮する必要があるので、定期的に腎機能などの確認を行ってもらう

アピキサバン

副作用と確認事項

減量基準

確認事項:次の基準の2つ以上に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、1回2.5mg1日2回経口投与する。

  • 80歳以上
  • 体重60kg以下
  • 血清クレアチニン1.5mg/dL以上

指導事項:定期的に体重と腎機能をチェックしてもらうよう指導

エドキサバン

副作用と確認事項

出血

確認事項:服薬を忘れたときの対応が理解できているかチェック

指導事項:服用を忘れた場合は直ちに服用し、翌日から毎日1回の服用を行うよう指導。服用を忘れた場合でも、一度に2回分を服用せず、次の服用まで12時間以上空けるように指導

減量基準

確認事項:クレアチニンクリアランス30〜50mL/minの患者には、減量して投与を行う。クレアチニンクリアランス15〜29mL/minの患者には、本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は減量を実施してもらう

指導事項:中等度の腎機能低下がある場合には減量を考慮する必要があるので、定期的に腎機能などの確認を行ってもらう

まとめ

血液凝固阻止剤の特定薬剤管理指導加算に関しては出血に関しての服薬指導に注力する必要があります。例えば出血以外の副作用に関して記載があったときに「何が重大なリスクなのか」ということが明確にならないと一般的な服薬指導ではないかと個別指導の際に指摘されました。

具体的にはバイアスピリンの投与に関して、「消化性潰瘍になる恐れがあるので注意してください」というのは一般的な指導で、そこにさらなる介入があるから指導加算なのだということです。つまり指導官が言うには「消化性潰瘍になる恐れがあります。さらに出血のリスクが高まるので下血等に注意してください」などとなるのかもしれません。

上記の各薬剤に関しての指導内容は警告や重大な副作用についての情報も取り入れて記載しています。それは指導加算は最低限の服薬指導を行わないと算定できないからです。警告事項の確認や重大な副作用についての説明は最低限の服薬指導に入る可能性がありますので注意してください。

血液凝固阻止剤の特定薬剤管理指導加算は出血リスクに重点的な服薬指導を行い、副作用のチェック(初期症状)、患者背景、対応、減量基準に準拠しているかなどを薬歴に記載するようにしましょう。