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46歳の悲しい転職活動

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この記事の背景

転職活動を余儀なくされた46歳の男性薬剤師から話をされた実話をもとにした問題提起

「少し話だけでも聞いてあげてください」

あるとき担当のMSから連絡を受けました。

「困っている人がいるので助けてほしい。ある男性と面談をしてほしい」

そのとき事情はあまりわかりませんでしたが、そこで出会ったのが46歳の男性でした。深く話を聞いていると転職活動などをしたことがなく、右の左もわからないので、その時の担当のMSに泣きついたということでした。男性は転職活動の前は3店舗の系列を持つ個人経営の薬局の中の1店舗の管理薬剤師ということでした。

開局1店舗目の管理薬剤師として勤務していてずっと同じ薬局にいたそうです。その会社の社長は元卸で非薬剤師の開設者の薬局とのことでした。

「私は企業の右腕でした」

開局から店舗展開までずっと相談役として従事していた男性は「社長は私のことを右腕だと重宝してくれていた」と話をしていました。男性の年収は650万前後と話をしていたので、周辺の環境から考えると平均くらいかと思います。

3店舗になった後も薬剤師とのコミュニケーションや情報共有などは社長の代わりに行っていたということです。社長は実務にはあまり関与はせず、店舗展開などを重点的に考えていて、医師へのアプローチなどが主な仕事になっていたそうです。

企業自体はあまり積極的な加算などは取っておらず、社長の考え方としても在宅などもノウハウがないので行わないというスタンスの企業だったそうです。後発品に対しても「ある程度」という考え方を持っていて、新しいことなどはチャレンジせずとも気楽に働ける環境が魅力だったと話していました

急に訪れるM&A、そして強いられる退職

この男性が転職活動を強いられる原因となったのは薬局の身売りでした。社長は身売りしたお金を退職金代わりに受け取りいなくなってしまったということでした。男性などの従業員にM&Aの話があったのは1ヵ月程度前、雇用に関しては継続することもできると伝えられたそうです。

そして、変わったのは看板だけではなかったそうです。介入してくるエリアマネージャー、加算に関してもノルマを強いられ、それでもなかなか加算なども進まないので、結局最後には管理薬剤師も代わりの薬剤師に交代になってしまったそうです。

右腕だったのに

会社に残りづらくなった男性は最終的に退職の意思を固めます。そして転職活動をしようと思ったけれども何から始めてよいかわからないのでMSを頼ってきたということです。

この男性が面談のときに放った一言が忘れられません。

右腕がなくても足があれば動けるんですよね

どうすればよかったのか

この男性が未来を変えられた可能性があるポイントは2つあると思います。

1.管理薬剤師のときに加算などにも取り組むべきだった

これが最大のポイントだと思います。

これさえできていれば経営者が変わっても居場所ができたと思います。特にかかりつけ患者を掴んでいる薬剤師を変更するなどはできないでしょう。そうなれば冷遇されることもなく、新しいエリアマネージャーになってからも大きく仕事の変化はなく働くことができたでしょう。

積極的に加算など取り組むことによって、どの環境に行っても基本的には同じ仕事をキープすることができます。

2.自分自身の市場価値を理解しておくべきだった

もう1つのポイントは自身の市場価値を知っておくだと思います。

なんとなく600万円をもらっていた状態だった思いますが、その数字に根拠があった方が良いと思います。そして何よりも好条件の転職先があれば、もっと早い段階で転職を行うべきだった環境だったと思います。

非薬剤師の社長は多くいると思います。その方の今後のビジョンが自身のビジョンとどのくらい重なっているか、薬局経営の将来性などを話し合ってください。もし仮に数年のビジョンしか見えていなかったり、ネガティブな考えしかもっていないのであれば転職も1つ検討した方が良いと思います。

視野を広く持つことも大切だと思います。

まとめ

最終的にこの方は採用していませんし、その後はどうなったのかわかりません。46歳からの転職で保険知識などもあまりない薬剤師としては少し不利になるかもしれません。

転職をする場合も、転職しない場合も現職のときに知識や経験を積んでおくことが重要だと思います。

それにしても「右腕がなくても歩くことはできる」という言葉は悲しいものでしたね。