高齢者施設の営業をしている方も多いのではないでしょうか。
高齢者施設に営業をする前に各施設の特徴を今一度確認しておきましょう。この記事からは各施設の特徴などを簡単に記載しています。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームの解説
特別養護老人ホームは介護老人福祉施設と表記されることもあります。
広域型特別養護老人ホーム
30人以上が入所している
地域密着型特養(サテライト型と単独型)
30人未満が入所している
※本体施設があるかどうかでサテライトと単独が分かれるがあまり意識しなくても良いと思います。人員配置が少し変化するなど違いがあります。
根拠法
老人福祉法第20条の5(介護保険法第8条)
受け入れ介護度
要介護3~5(特別養護老人ホームは、要支援1・2の人は利用できません。また、要介護1・2の人もやむを得ない理由がある場合以外は利用できません。)
基本的には65歳以上の高齢者が対象となり、特定疾病に罹患している場合なら40~64歳までの希望者にも入居が認められます。
要介護1・2のやむを得ない理由とは
・認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる
・知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さなどが頻繁に見られる家族。その他による深刻な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態である ・単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により、家族などによる支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分である
薬局との関わり方
配置医師は非常勤でも良いために、非常勤医師の診療に合わせて処方箋が発行されるケースが多くなります。処方箋に合わせて調剤をして施設に届けて管理するという形になります。処方箋は非常勤医師のクリニックから発行されます。
特別養護老人ホームでは居宅療養管理指導での算定は不可です(介護保険使用不可)。
ただし、末期の悪性腫瘍患者のみ在宅患者訪問薬剤管理指導での算定が可能です(医療保険での介入)。
薬剤服用歴管理指導料は43点で算定が可能です(当然ですが、算定要件を満たした場合です)。
グループホーム
グループホームの解説
グループホームは認知症対応型共同生活介護と表記されることもあります。
グループホームの入所単位
1ユニットは5~9人で、1つの施設につき原則2ユニットまでと決められています。そのために1施設当たり18人が最大となります。
根拠法
老人福祉法第5条の2
介護保険法第8条
受け入れ介護度
65歳以上の高齢者で、かつ要支援2または要介護1以上の認定を受けている方
(※特定疾病を持っている場合は65歳未満でも入居可能な場合がある)
認知症の診断を受けた方
集団生活を営むことに支障のない方
施設と同一の市区町村に住民票がある方
薬局との関わり方
近隣医師に受診に連れて行っている場合や、医師が訪問診療を行っている場合などがあります。各施設によって医師の関わり方が大きく違うこともあるので確認が必要です。
グループホームでは基本的に介護認定を受けているので、居宅療養管理指導での算定が可能になります。居宅療養管理指導を算定する際には施設内のケアマネに情報提供する必要があります。また、施設内のケアマネとケアプランの共有を密に行っておくことで利用者の満足にも繋がります。
介護老人保健施設
介護老人保健施設の解説
介護老人保健施設は老健と表記されることもあります。
根拠法
介護保険法第8条
受け入れ介護度
要介護1~5
日常生活に戻るためにリハビリが必要な高齢者が対象のため3~6ヶ月の入所期間になります。比較的空きが出るのが早いために人の出入りは多くなります。
薬局との関わり方
医師は常勤での配置が定められているので、施設内の医療提供は常勤医師が行います。薬は施設内の薬剤師が行うこともありますが、まれに調剤委託をしていることもあります。指示箋は常勤医師から発行されます。
老人保健施設では医療保険が適応になりませんので全額自費扱い(施設負担)です。
ただし、高額な薬剤などを用いると施設の負担になるので、ジェネリック医薬品や減薬などのニーズが高くなります。全額自費での扱いになるために1人当たりの調剤料を事前に設定するなど補填している場合が多くあります。
委託費は地域や施設規模によって格差があるために一概には言えませんが、0~数千円まで様々です(0円ってなんで受けているのか理解できませんが…)。平均すると2000円前後が多いようです。
介護保険を利用した居宅療養管理指導や、医療保険を利用した在宅患者訪問薬剤管理指導などは算定できません。
養護老人ホーム
養護老人ホームの解説
養護老人ホームは特定施設の1つに該当しています。 特定施設入居者生活介護のサービスを提供できる施設です。
根拠法
老人福祉法第20条の4
受け入れ介護度
市区町村が対象者の調査を行い入居を決定しているという特徴がある施設です。生活環境や経済的に困窮した高齢者を養護し、社会復帰させる施設となっているため、介護職員ではなく支援員が自立をサポートするという体制を取っています。
介護施設ではないために介護サービスは自施設では行っていません。そのために2005年の介護保険法の改正の際に養護老人ホームが「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護」の指定を受けられることになりました。
薬局との関わり方
医師は嘱託医が対応していることが多いと思われます。定期回診を実施している場合には嘱託医からの処方箋を応需して対応します。
養護老人ホームでは居宅療養管理指導での算定は可能です。但し、利用者本人だけでなく、施設との契約なども必要となることがあるために、事前に施設側との確認も必要です。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅の解説
サービス付き高齢者向け住宅はサ高住と表記されることもあります。
サービス付き高齢者向け住宅が必ず提供しなければならないサービスは、「安否確認」「生活相談」のみです。その他の「食事」、「介護(入浴、排せつの介助など)」、「生活支援(買い物代行、病院への送り迎えなど)」などのサービスが提供されるかどうかは、それぞれの住宅によって異なります。
安否確認・生活相談とは
安否確認は定期的に入所者の安否を確認し、緊急時には医療機関に連絡する体制を取ることを言います。
生活相談は日常生活を送る上での相談、また心身の状態に応じた医療介護を受けるための支援を行うことを言います。
根拠法
高齢者の居住の安定確保に関する法律
受け入れ介護度
自立~要介護5まで様々な方が入所しているのが特徴ですが、施設によっての基準があるために施設ごとの状況の確認は必要になります。特定施設の認定を受けている介護型は要介護や認知症まで受け入れることができますが、一般型の場合には比較的元気な高齢者が多くなると思われます。
薬局との関わり方
高齢者の住居となっているために 介護保険での居宅療養管理指導での算定は可能です。また介護認定のない方には医療保険での在宅患者訪問管理指導での算定も可能です。
ただし、特定施設の認定がある場合(介護型)にはサ高住にいるケアマネが担当になることが多くなりますが、それ以外の場合には各々のケアマネとのやり取りが必要になるために情報などの共有に注意が必要です。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護の解説
小規模多機能型居宅介護は「通い」「訪問」「宿泊」を一体として提供されるサービスです。小多機と略されることもあります。
通常はデイサービス、ショートステイ、訪問サービスをそれぞれの事業者で行っていましたが、それを一体にすることで同じ顔なじみの事業者が全てを担当してくれるという利点があります。
根拠法
介護保険法第8条
受け入れ介護度
要支援1〜2 または 要介護1〜5 の認定を受けている方で、事業者と同じ市町村に住んでいることが条件になります。
また小規模多機能型居宅介護の事業者にケアマネを変更する必要があります。
薬局との関わり方
小規模多機能型居宅介護は居宅療養管理指導での算定は可能です。小規模多機能型居宅介護事業所に専属のケアマネがいるので、情報提供に関しては事業所のケアマネに実施することになります。
不思議に思われるかもしれませんが、宿泊サービス中に施設に訪問したとしても、小規模多機能型居宅介護は自宅扱いとして居宅療養管理指導が算定可能です。後述しますが、ショートステイ事業所は居宅療養管理指導は算定不可なので勘違いが生じやすい点になります。
居宅療養管理指導を算定できないケースの存在
小規模多機能型居宅介護での算定に関しては1点注意が必要になります。それは「通い」サービスの使用中です。
日帰りの「通い」サービスの利用中に施設に訪問した場合には居宅療養管理指導を算定することができません。日帰りの「通い」サービスを使用した際には帰ってきて自宅に訪問する必要があります。
小規模多機能型居宅介護は「宿泊」「通い」と利用者がいるところが様々なために、訪問スケジュールなどの調整が密に必要になるので注意が必要です(ケアマネとスケジュールを確認することで容易に解決します)。
ショートステイ事業所、デイサービス事業所、宅老所
各事業所の解説は省略します
介護認定を受けている方は各々でケアマネとの相談で各事業を受けています。
この記事を作成するにあたり、自治体に確認を行っていますが、宅老所という存在は法律などで明記されていないということで深く教えてもらえませんでした。
佐賀県のホームページには宅老所の解説があったので参考まで
薬局との関わり方
ショートステイ事業所への訪問、デイサービス事業所への訪問に関しては居宅療養管理指導での算定は認められていません。居宅としての扱いではないので、この点に関してはスケジュール調整に注意が必要になります。
有料老人ホーム
有料老人ホームの解説
有料老人ホームは①食事の提供、②介護の提供(入浴・排泄・食事の介護等)、③洗濯や掃除などの家事の供与、④健康管理のうちいずれか一つ以上のサービスを提供する施設として定義されます。
老人ホームの種類
老人ホームは大別すると「介護付」「住宅型」「健康型」に大別されます。
特定施設入居者生活介護の指定を受けたものが介護付有料老人ホームになります。
今回は薬剤師の訪問に焦点を当てているので、「独歩で通院可能である患者」の可能性が高い健康型は省略しています。
根拠法
老人福祉法第29条
受け入れ介護度
自立~要介護5以上の認定を受けている方で60歳以上となっています。
「介護付」の入所の際にケアマネを変更を求められることもありますが、今のままのケアマネを継続することもできます。「住宅型」の場合には一部ではケアマネが配置されていることもあるので確認が必要です。
薬局との関わり方
近隣医師に受診に連れて行っている場合や、医師が訪問診療を行っている場合などがあります。各施設によって医師の関わり方が大きく違うこともあるので確認が必要です。
有料老人ホームでは介護認定を受けている方には居宅療養管理指導での算定が可能になります。 介護認定のない方には医療保険での在宅患者訪問管理指導での算定も可能です。
個々のケアマネが施設内なのか、施設外なのかによっても情報提供の内容は異なります。また施設内での生活などもチェックする必要があるので、施設内の職員とも情報を共有を心がけると利用者の満足に繋がります。
まとめ
これですべてがカバーできているわけではありません。上記の施設は担当したことがある施設を中心に記事にしました(養護老人ホーム以外)。あと2種類くらいが残っていると思いますが、担当したことがないのでイメージができないので割愛しました。
「特定施設入居者生活介護の指定」など施設の特徴を掴むために必要な単語がまだわからない方は少し詳しく調べると良いと思います。
これは全て営業のための事前準備です。それでは次回以降で施設営業について記事にできればと思います。